映画「世界で一番ゴッホを描いた男」

以前、たしかNHKで放送されていたものをDVDをレンタルして視聴。うむ、これは良いドキュメンタリー。もはや映画並みの素晴らしきストーリー展開。ドキュメンタリーだからこそ、さらに熱い

テレビ放送のときは「贋作村」と表現されていたけど、DVDでは「油絵村」になっていた。贋作とは言うものの、すべて著作権がフリー(没後50年を過ぎた)になったものだから問題はない

あらすじ

20年間、ひたすらゴッホの絵を模写し続けた男性が主人公。写真を見ながらひたすらに書いている。多くはフランスからの注文で何十枚も書いていく。サイズも要望に応じて、大きくしたり小さくしたり…

男性はゴッホに憧れ、まるでゴッホになろうとしているようにも見える。「いつか本物のこの目で見る」ことを夢見ながら、ゴッホへの思いを馳せる。しかし、複製絵画による利益は僅かなものでいくら家計はいつも厳しい

途中、住み込みで高校に通う娘が出てくる。学校が辛いと泣きながら両親に訴える。授業の言葉が違うため、さっぱりわからないのだという(中国ではたしか4ヶ国語ぐらいある)。しかし、両親は絵画を描きながら「学校に行けるだけ幸せだ」と取り合わない

実は男性は小卒。実家が貧乏で中学校へも通うことが出来なかった。そのことを大人になっても悔やんでいて、自分の子供には学校に行ってほしいと願っていただった

ようやく貯金をため、念願のフランスへ。お得意の納品先に出向くと、そこは小さなお土産屋さんだった。男性は画廊に卸していると思いこんでいた。しかも、納品価格の10倍で売られていることを知り、少なからずショックを受ける

そしてついに念願のゴッホの絵を見に行くことに。本物を見えれば、自分は変われる、もっと素晴らしい複製画を描けるようになると信じて。美術館に出向いて本物と対峙した時、これまで20年間描いてきたものと、まるで異なることに驚愕をしてしまう

そしてハタと気がつく。これまで複製画は書き続けたけど、自分の絵は一枚も描いたことがない…

実家に戻り、愛する祖母を描き、懐かしき路地を描き、まるで自分自身を発見したかのように見える。

ドキュメンタリーの傑作

映画の最初の方に「油絵村の由来」などが文章で説明されるけど、それ以外は全く情報なし。ナレーションもない。たんたんと画面に出てくる、男性、家族、同僚などの会話で構成されている。それだけですべてが伝わるのがすごい

途中に出てくる娘の苦悩も心が痛い。でも、一緒にお出かけして幸せそう

フランスに行きたいという男性と「そんな余裕はない」という奥さんとの会話も良い。でも、絵の描き方を教えたのは旦那からと語ったり仲良さそう

同じ仕事をしている別の男性の作業場では、怒号が飛び、スタッフはキレる展開があったり。対して主人公の男性の作業場では丁寧に説明し、少々絵が歪んでいても褒めながら育てていく姿を見ることができる

映画の面白さの基本に「登場人物の秘密と成長」がある。このドキュメンタリーには、男性の過去(小卒だった)が明らかになり「だからか…」となったり、お土産屋にショックを受け、ゴッホの絵を見て落胆し、再起していくさまをみることができる

見事としか言いようがない。また時間をおいて見たいと思うドキュメンタリー