映画「密航者」に思うこと【ネタバレ】

2021年6月4日

ミッション遂行のため、火星へと向かう3人の宇宙飛行士。だが、予定外の人物が宇宙船に乗り込んでいたことで、全員の命が危険にさらされ、難しい決断を迫られる。

最近見た映画なかで、ずっと緊張感が持続する良質な映画。しかしながら、どうも評価がイマイチなので「そんなことはない!」という思いで書いてしまう。映画を見たことある前提でネタバレで書くよ。

この映画のレビューをあれこれ読んでいると、いくつのかのパターンが見られたので列挙してみたい

  • マイケルは結局なんだったの?なんで、あんなところにいたの?
  • 「密航者」ってタイトル意味なくない?
  • あんなモヤッとした終わり方ってなんなの?
  • なんで、ゾーイが犠牲にになるの?
  • 船長はなぜ「私が酸素を取りに行く」って言わないの?

おさらいとしてストーリーを書くと、火星に向かったロケット内で気を失った整備士を発見。その場所は生命維持装置が合った場所で発見時に破損してしまう。そのため酸素が足りない状態に…。ギリギリ3人分は確保できる。一人分足りない。誰かを犠牲にしなければならないのか?全員助かる道はあるのか?

「誰かを犠牲に」という展開の映画の多くは「俺は生き残るべきだ!」みたいなワガママな人がいたりするけど、この映画ではそういう展開はない。みんな良い人、「自分が犠牲になるべきでは?」という展開が続く。

船長は「このミッションに自分は必要ないから私が犠牲になるべきでは?」と地球のスタッフに相談する。
デビッドは、酸素を確保するために3年間準備、今後に2年間のミッションの予定も全て犠牲にすることを選択する。
ゾーイは自らの命を賭して他の人を救おうとする。
マイケル(密航者)は「君を連れていけない」と言われて素直に自ら命を絶とうとする。

それぞれの覚悟と思いが交錯して、一時も目が話せない。では、みんなが「なんで?」と思ったところを一つ一つ、書いていこう

マイケルは結局なんだったの?なんで、あんなところにいたの?

「密航者」ってタイトル意味なくない?

結論、マイケルは「密航者」だったんです。もうタイトル通りなんですよ。マイケルは自分の意志で密航しているんです。ここを見落とすと、この映画のすべてが崩れてしまう。

マイケルの発見時、天井に、ネジ止めされた鉄板の中にいました。ネジ止めされていたということは、誰かがそうしたわけです。推測として「マイケルの密航に協力者がいた」と考えればとても自然。

天井というのも、宇宙空間の人工重力では天井でありますが、地球上での発射準備中は横向きで壁にあたる部分だったんでしょう。マイケルからすれば真正面の場所だったはずです。そこにコソッと隠れて…。

そんな都合のいい空間が…あったんです。マイケル自身が説明していますが、もともと二人用のロケットを三人用にするために不要な機材などが外され、空間ができていると言っています。

発見時「妹が!戻らなきゃ!」と叫んで、その動揺ぶりにみんなマイケルは事故で搭乗していたと思っています。でもゾーイが「脳震盪を起こして記憶が混乱している」と言っていました。マイケルは自ら乗り込んだのに記憶の混乱で「なんでこんなところにいるんだ?」と思ってたわけです。

後に妹への連絡で「お前(妹)にとっても、俺にとってもラッキーだった」と言っていますが、もともと妹は保護されるという算段があったのように思えます。

なお「次のミッションの試験には受かりたい」「もう、その必要ないでしょ」という会話がありますが、正直マイケルは優秀とは思えません。「覚えが早いほうなんです」って発言。まるでアルバイト面接みたいじゃないんですか?デビットの手伝いをしているときの会話も優秀さを感じさせません。

このタイトルだからこそ、この映画なんですよ。いきなりネタバレしている点で本当にすごい映画です。

あんなモヤッとした終わり方ってなんなの?

マイケルは「密航者」だったと考えると、あのラストで感じる印象はだいぶ変わってきます。清々しくやりきった感じさえ感じるゾーイの姿がとてもつらく思えます。

マイケルが自分の意志で乗り込み、その結果、生命維持装置が破損して、訓練もしていないから何も出来ない。本当にただのお荷物状態のマイケル。デビッドから自殺を促されたとき、覚悟を決めようとしていていたのも「自分の責任だ」という自覚が合ったからでしょう。それと止めたゾーイ。生き残るマイケルと死にゆくゾーイ。

マイケルが「密航者」であると気づいていると、決してもやったした終わり方ではないとわかります。

なんで、ゾーイが犠牲にになるの?

犠牲を出したくない、という思いが強かったからこそ、頑張ってきたゾーイでした。しかし、致命的な失敗をします。酸素ボンベを失ったことです。これが彼女が自ら犠牲になることを選んだ理由でしょう。責任を取るという選択。そして再びボンベを取りに行くことができるのは自分であると…。

デビッドは、映画全体を通して「現実を受け入れる」というポジションでした。マイケルに(自害用の)注射器を渡し、船長にどうするべきかを進言してきました。また「好きでもなかったジャズ」を聞くようになった理由も妻が好きだったものをただ受け入れたのだし、ジャズの特徴の不規則性も「それがいい」という点からも現実を受けいれる姿勢が見て取れます。

だから、デビッドは自らの意思で率先していこうとするゾーイが、もっとも現実的な選択だと考えたのでしょう。

映画最後のゾーイの独白。とても胸に刺さる。

船長はなぜ「私が酸素を取りに行く」って言わないの?

船長はマイケルを発見して際に腕を負傷しています。ギプスをしているのでおそらく骨折でしょう。そのため、船外での作業ができない状態でした。特にレンチを使ってケーブルを登るなんてことはできません。

だから、一番最初に自分を犠牲にする決断をしたにも関わらず、なにもできない状態だったんです。このあたりのことを一言台詞があれば理解しやすかったんですけど、全然なかったのでわかりにくいですね。

船長は映画の冒頭から「他者の意見に従う」というスタンスです。地球から飛び立つときも、地上スタッフの「ミッション続行」という意見を尊重しました。マイケル発見の相談、マイケルを犠牲にするという意見も受け入れました。そして、デビッド、ゾーイの意見も受けれていきます。

これだけ書くと優柔不断に思えるかもしれませんが、決断した中で、可能範囲で妥協するという感じなので、決して自分の考えや信念がないというわけではありません。

振り返ってみて…

たった4人だけで展開する映画。たった4人だけど、すごく面白い。映画館で上映するにはインパクトが小さい(大きく宣伝されずに埋もれやすい)けど、Netflixという環境だからこそマッチしている映画だと思います。こういう良質な映画がこんなに気楽に見ることができるのは幸せだなー。